50 代からのランニング:人生を彩る新たな挑戦
「体力がないから…」
そんな風に思っている 50 代以上のあなたへ。ちょっと待ってください!
ランニングは誰でも楽しめるスポーツです。
今回は、57 歳から 64 歳までの 7 年間で、フルマラソンを 15 回以上完走し、今もなお記録更新を目指して挑戦を続ける市民ランナー・入江さんのインタビューを通して、50 代からランニングを始める魅力や、長く続ける秘訣をお届けします。
57 歳からの挑戦:ランニングとの出会い
今回お話を伺ったのは、倉敷市在住の入江さん(64 歳)。
中学・高校ではバスケットボール、大学ではテニス、そして社会人になってからは市民ボクシングを続けるなど、長年スポーツに親しんできました。
そんな入江さんが、ランニングを始めたのは 57 歳。
「ボクシングの会長から『動体視力や体力が落ちてくると、怪我のリスクも高くなるよ』と言われたのがきっかけでした。
確かに反応が鈍くなってきたと感じていたので、体力維持のためにランニングを始めてみようと思ったんです」
しかし、長年のスポーツ経験者である入江さんでも、最初は苦労したと言います。
「ボクシングは 1 ラウンド 3 分。3 分頑張れば 1 分休憩できるというスタイルだったので、走り続けることがとても辛かったんです」
止まっては走り、止まっては走りを繰り返す日々。
「誰でも走れる」と思っていただけに、その現実とのギャップに悔しさを覚えたと言います。


トレランとの出会い:新たな挑戦
走り始めて 2 年後、入江さんはトレイルランニング(トレラン)に出会います。
入江さんは「トレラン」を始めてから、ロードのランニングとはまた違った魅力に気づかされました。
「トレランでは、ロードのように常に走り続ける必要はありません。特に急な登りでは歩くことも一般的で、無理に走るよりも効率的な場合があります。険しい道を登り切った先に広がる景色は格別で、それもトレランの大きな魅力の一つです。」
特に、入江さんは下り坂に魅了されました。ボクシングで培ったステップワークが、トレランの下り坂で非常に役立ったのです。右、左、右、(ワンツーステップ)というボクシングのステップが、トレランの下り坂でのスムーズな体重移動と足の運び方にぴったりとハマったのです。
インタビューの中で入江さんは、「最初は『走ることは向いていないのかな…』と自信を無くしていました。しかし、ボクシングで培ったステップワークがトレランの下り坂で活かせることに気づくと、次第に走ることが楽しくなり、軽快に駆け抜けられるようになったのです。」と語っています。この言葉からも、入江さんがトレランの下り坂でボクシングの経験を活かしている様子が伝わってきます。
トレランは、体力だけでなく、バランス感覚や状況判断能力も養うことができます。入江さんは、トレランを通じてこれらの能力を高め、さらにランニングの幅を広げることができたのです。
怪我からの復帰:筋トレの重要性
しかし、順調にランニングライフを送っていた入江さんに試練が訪れます。
「トレラン中に半月板を損傷してしまったんです。医師からは手術を勧められましたが、筋トレでの回復を選びました」
3 つの病院を回り、最終的に「筋トレを頑張れば痛みは引く」という 3 つ目の病院の医師の言葉を信じ、復帰を目指すことに。
「スクワットや、仕事中に椅子に座りながら足首に重りをつけいて上げ下げするなど、膝に筋肉をつけるためのトレーニングを徹底しました」
そして 3 ヶ月後、見事に回復。
「医師には『もう走るのは無理だろう』と言われていましたが、無事に復帰することができました」
諦めずにリハビリを続けたことで、再び走る喜びを取り戻した瞬間でした。
挑戦達成──112km の極限レース「KAMI100」
怪我から復帰し、再び走る喜びを手に入れたことで、『せっかく走れるようになったのだから、もっと大きな挑戦をしてみよう』という思いが湧いてきました。そうして入江さんが目標に定めたのが、兵庫県のハチ北高原で開催される 112kmのトレイルランニングレース『KAMI100』でした。
標高差のある 37km のコースを 3 周するという過酷な大会。距離の長さだけでなく、精神的なタフさも求められます。
「1 回目の挑戦では、途中で気持ちが切れてしまい、完走できませんでした。でも、後で知ったんです。スイーパー(最後尾を走るスタッフ)と一緒にゴールした人もいたと。『あのまま進んでいれば完走できたのではないか』と悔しさが残りました」
この悔しさをバネに、翌年再び挑戦を決意。
「怪我の再発に注意を払いながら、練習を積み重ねました。経験豊かな先輩ランナーからアドバイスを受け、装備の選び方やレースでの立ち回り方を学び、万全の準備を整えて KAMI100 に再挑戦しました。
2 回目の挑戦では、序盤からペースを調整。山道は雨でぬかるみ、視界も悪い中、慎重に足を進め続けました。
そして 24 時間半かけてゴールラインを越え、ついに完走!
「怪我から復帰して、こんな過酷なレースを走り切れたことが大きな自信になりました。やっぱり挑戦することが楽しいんですよね」
「次なる挑戦」への意欲をさらに高めるきっかけとなりました。


普段のトレーニング──週 4〜5 日のランニング習慣とヨガ・新たな挑戦
現在、入江さんは週 4~5 回のペースでランニングを続けています。
「土日のどちらかに長い距離を走り、平日は仕事帰りにトラックや公園を走っています。また、約 3 年前から
週に 1 回ヨガを取り入れ、身体だけでなく精神面のセルフメンテナンスにも努めています。
ヨガの呼吸法や集中力を高めるアプローチが、自分にとって驚くほどしっくりきました。レース中の苦しい場面でも冷静
に呼吸を整え、心を落ち着かせることで、最後まで粘り強く走れるようになったと感じています。」
そんな中、平均年齢 70 歳以上のマスターズランナーの方々と出会い、その走りに大きな衝撃を受けました。
「『こんな年齢になってもこれだけ走れるんだ』と驚かされると同時に、『自分ももっと挑戦できるのではないか』という新
たな思いが芽生えました。そして、もう一つの挑戦へと踏み出すことを決意したのです。」


次回はさらに入江さんの走る人生を深掘りしていきます!